
山口県下松市沖に浮かぶ笠戸島で今年もレモンの収穫が最盛期を迎えている。高齢化で広がる耕作放棄地を減らそうと、住民グループが10年前から栽培に取り組んでいる。完熟前の「青いレモン」は島の特産品として定着した。果汁や皮を使った加工品の開発も相次いでいる。
「絶好の秋日和になりました。トゲに気を付けて、元気にもいでいきましょう」
10月31日、瀬戸内海に面したレモン畑。笠戸島特産品開発グループ(38人)の守田秀昭さん(76)が集まったメンバーらに呼びかけた。
この日が「青いレモン」の初収穫。ハサミを手に慣れた手つきで摘み取ったレモンが次々とケースに積まれていく。「小ぶりだけど、出来はそんなに悪くないね」。メンバーの一人で、畑を所有する森野幸雄さん(75)が目を細めた。
今年は梅雨明けから雨が少なく、夏場は高温に見舞われた。地面がひび割れるほどの日照りが続き、果実の成長が遅れた。木を枯らすゴマダラカミキリも例年以上に発生し、駆除に苦労したという。
島の特産品開発と活性化をめざし、グループが誕生したのは2005年のことだ。人口減少と少子高齢化が進む中、増え続ける耕作放棄地の活用が課題だった。サツマイモを育て、特産のヒジキを混ぜた「ひじきコロッケ」や、餅に練り込んだ「いも餅」にして朝市などで販売。さらなる特産品開発の目玉として選んだのが、レモンだった。
「当初、四国などで作られているオリーブも候補にあがりました。でも素人が商品化するのは難しい。かんきつ類なら栽培経験もある。なんとかやれるぞ、と決まったんです」と森野さん。
先進地を視察し、研究を重ねてレモンを育て始めたのは13年春から。これまでに島内の4カ所で計258本の苗木を植えてきた。収穫を始めた15年度は1400個ほどだったが、昨年度は9千個を収穫するまでになった。
果実が色づく12月に始めていた収穫の時期を、6年前から1カ月早めた。「完熟前の青いレモンが食べてみたい」。そんな声を朝市で耳にしたのがきっかけだ。黄色いレモンに比べ、酸味と香りが強いのが特徴。島の国民宿舎「大城」などで売り出すと口コミで人気が広がり、市内のスーパーなどからも注文が舞い込むようになった。
ケーキやマカロン、クッキー、パエリアの素(もと)やパスタソース――。地元企業などと連携し、材料に果汁や皮を使った加工品も続々と誕生した。東北の食品会社に製造を依頼して20年に発売したレモンサイダーは年間約8千本が完売するヒット商品に。今年はさらにレモンリキュールやはちみつレモンも売り出した。
収穫は1月中旬まで続く。毎日がトゲとの戦い。収穫シーズンが終わる頃には、手は傷だらけ、作業着は穴だらけになるという。それでも「子どもや孫以上にかわいい」と森野さんは笑う。
「レモンってこんなにおいしいものなのか、と言われるような最高のレモンをつくっていきたい」。そう言って額の汗をぬぐった。(三沢敦)
香り立つ「青いレモン」、特産品に 山口・下松の笠戸島の島おこし:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル
Read More
No comments:
Post a Comment