近年好調が続いてきたものの、2022年に15年ぶりで前年の販売数量を下回ったRTD(蓋を開けてすぐに飲める低いアルコール飲料)市場。新型コロナウイルス禍が落ち着いて、外食需要が復活し、家飲み商品には向かい風の中、23年は大手4社(アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリー)のシェア争いが白熱しそうだ。新たなパイを獲得するため各社はどう動くのか、またRTD市場全体の潮流はどうなるのかを追った。
RTDは、ビール市場に次ぐ販売規模に
「一言で言うと、RTD市場は混沌化してきた」。こう語るのは、サッポロビール マーケティング本部長の佐藤康氏だ。
缶商品をメインに、チューハイ、カクテル、ノンアルコールなどの商品カテゴリーを指す「RTD(レディー・トゥー・ドリンク)」。蓋を開けてすぐ飲めるという由来の呼称が定着し、サントリーの「ストロングゼロ」や、キリンビールの「氷結」をはじめ、各社が多種多様なブランドを展開している。
このRTD市場は活況が続いてきた。2007年から14年連続で市場規模が昨対比で上回り、21年は新型コロナ禍での巣ごもり需要も後押しして過去最大を記録。翌22年は外食産業の復活や物価高騰により、15年ぶりに前年割れしたものの、購入者数でビール類の新ジャンルを抜いて、ビールに次ぐ市場規模に成長している。
今後も成長が予測されるRTD市場だが、22年が前年割れに転じたことで、市場の状況も変わりつつある。冒頭の佐藤氏の発言に加え、アサヒビールの松山一雄社長は「RTD市場はいったん踊り場に入り、新しい風が吹き始めている」と発言。各社にとって23年は変化の年となりそうだ。
大手ビールメーカー4社はどのような戦略を描くのか。軸となるのは、引き続き人気が高いレモンフレーバーのRTDだ。22年のインテージSRIのデータによると、レモンフレーバーは、RTD市場全体の販売規模の約44%を占める。当然ながら、その強さは各社とも織り込み済み。その上で、選ぶ戦略に違いが見えた。今回は、前編後編に分けて、サントリー、サッポロビール、キリンビール、アサヒビールの動向をまとめた。
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今期の新商品投入で、レモンフレーバーと距離を置く選択をしたのは、22年のRTD市場が前年割れとなる中、数量ベースで昨対比101%を維持したサントリーだ(ノンアルコール商品を除く)。旗艦ブランドの「ストロングゼロ」や「ほろよい」シリーズをはじめ、22年に発売し、計画比158%を売り上げた「翠ジンソーダ缶」の好調が後押しし、多彩なブランドでRTD市場をけん引した。
この勢いに拍車をかけるため、サントリーは2つのキーワードを掲げた。それが「食中酒としての提案」と「若年層のトライアル獲得」だ。
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レモンサワー競争はまだ続く? 2023年のRTD市場は「混沌化」 - 日経クロストレンド
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